東京をはじめ日本の都市の景色は再開発を繰り返す中で、巨大かつガラス張りの建築物が空間を埋めるようになった。東京中心部は国土の0.6%であるが、そこに日本の全人口の 10 分の 1 以上が働き生活しているという。大小さまざまな建物が乱立して形作られた都市はカメラを通すことによって次第に奥行きを失い平面的に見えはじめ、それは日常生活の中では意識されない様相である。そこには、都市の発展とともに当たり前となったその体系や制度が、いわば「都市のレイヤー」として映り込んでいる。おぼろげにうつりゆく光景は一見合成された全くのフィクションにも思えるが、この世界に実在する光景であり、人々の行き交う様子はどこか安堵感さえ覚える。いまや眼前の世界よりもインターネットをはじめとした情報が現実を凌駕していく中、映像という視覚情報によって都市の確からしさ(あるいはおぼつかなさ)ーすなわち都市が上書きされる速度と人々の記憶の狭間ーを探索する。