細腕で丹念にアクリル絵具を運び続けて描き出される煌めきの風景と、そこにたたずむ少女や天使像。それらは彼女自身のアバターであり対話者です。絵の各所へ配される灯火や光のアクセントが特徴的で、時にイルミネーションのようなスケール感で、また時には星の瞬きを思わせる微かな気配となって物語性を増幅します。
高い粘度をもって全体を覆うアンバー気味の彩色は、母胎のように深い心象風景の奥行きを思わせ、印象的に発光する光輪が、そこに生命を宿そうとする祈り、聖なるものへの憧憬の強さとして伝わり見るものの心を打つのです。
童画のようにピュアな感受性をたたえつつ、独特で細やかな技法をもって儚さと普遍性とを併せ持った世界観として描出できる異才によって、さかい氏は美大在学中より注目を集め、卒業と同時に地元仙台市を拠点としながら発表活動を始めました。一貫したコンセプト展開が見込める安定感や、成長見込みが期待を集めている新鋭です。
本作は、タグボート出品のための描き下ろし新作です。「童心を抱きしめ直す」が主題。ゾウの子どもは童心を象徴しているかのようです。
「幼い頃の私は好奇心に満ち、なんでもできるような無敵な気持ちでいた。その感覚は成長とともに、自分と世界への理解が深まるにつれ、少しずつ失われた。今の私のまま、あの頃の心のぬくもりを抱きしめ直すことができたなら、きっとより良い世界が開けていくはず」(作家ステイトメントより)