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Dawn Tree 「夜明けの樹」 〜Treasure box series 宝箱編〜

アシュレイ

「ここに隠す宝物を探そう」
完成した秘密基地を前にアーヴが言った。
「探す前に一つだけ注意点」
木箱を配りながらお姉ちゃんが僕を見た。
「宝物はこの箱に入るサイズにしてね。
じゃないと誰かさんが自分の宝物で秘密基地を占領させちゃうから」
「そんなことしないよ! 」って言おうとしてくしゃみが出た。
10日前に頭を坊主にした。
だから頭が寒くて、くしゃみがたくさん出た。
(本当は坊主じゃなく、もっとかっこいい髪型になる予定だった。
けど、お父さんが一生懸命カットしてくれた結果、何故か坊主になった)
坊主になったぼくを見て、お姉ちゃんは松ぼっくりとあだ名をつけた。
アーヴはゲラゲラ笑った。
けれどティアラは、父に剃られたぼくの頭を見ても笑わなかった。
ティアラは優しい子だなと感動した。

「それじゃあ各自宝探し開始!」
自分の木箱を抱えてアーヴは敬礼した。

お姉ちゃんは「女神の涙」の方向へ、アーヴは「真っ黒平原」の方向へ、
ティアラは「蜂蜜のお屋敷」の方向へ、それぞれ散って行った。

ぼくは「巨人の穴」に向かった。
「巨人の穴」は運がいい日だとキラキラ光る石が至る所に落ちていた。
そしてその日は運がいい日だった。
いや。とってもとっても運がいい日だった。
今まで見たことないくらい大きなキラキラ石がたくさん落ちていた。
小躍りしながら一番大きなキラキラ石を拾い上げた。
そしてお姉ちゃんの言葉を思い出した。


「宝物はこの箱に入るサイズにしてね。
じゃないと誰かさんが自分の宝物で秘密基地を占領させちゃうから」

ちぇ。ため息をつくと、木箱ぎりぎりのサイズのキラキラ石を拾った。
それを木箱にぎゅうぎゅう必死に押し込んで、秘密基地に戻った。


3人は既に戻ってきてた。
最初にお姉ちゃんが自分の木箱を開けた。
箱の中にはカラフルな貝殻がギッシリ詰まっていた。
「綺麗だね」とティアラが笑った。
お姉ちゃんは笑顔で頷いて、その貝殻を1個ずつ僕らに配った。
そして木箱を秘密基地に置いた。

次にアーヴが自分の木箱を開けた。
箱の中にはドングリがギッシリ詰まっていた。
みんながキョトンとした顔を浮かべると、アーヴは胸を張った。
これは必殺ドングリだ。投げると破裂して、臭い液体が飛び散る。
襲われた時には、だからこれを投げろ。護身用の武器さ。
アーヴは必殺ドングリを10個ずつ僕らに配った。
そして木箱を秘密基地に置いた。


次にティアラが自分の木箱を開けた。
中はほとんど空っぽで、4つの白く小さい塊が底にあった。
「これは私の歯だよ」
ティアラは口を大きく広げ、穴の開いた歯茎を指で差した。
「最近4本目がようやく抜けたの。つまり私の抜けた歯は、今世界でたった4本だけ。
その世界に4つしかないものを私たち4人だけが持ってる。
これってすごく素敵でしょ?」
大切そうに歯を掴むと、ティアラは世界に4個しかないものの3個を僕らに配った。
そして残り1個の歯が収まった木箱を秘密基地に置いた。


最後に僕が木箱を開けた。
箱の中には、箱とほぼ同じサイズのキラキラ石が一つだけ入ってた。
「これが僕が見つけた宝物だよ」
それだけ言うと、ぼくは木箱を秘密基地に置いた。
泣かないようにするので必死だった。




その日の夕方、一人で秘密基地に戻った。
セミが鳴いていた。気付くと僕も泣いていた。


悲しかった。すごく恥ずかしかった。
ティアラは世界にたった4つしかないものを宝物として選んだ。
それを4人で分かち合おうとした。
アーヴもお姉ちゃんも、4人で分けられる宝物を見つけてきた。
なのに僕だけが僕だけの宝物を探していた。
挙句に僕は、キラキラ石が木箱に入るサイズである事すら恨んだ。
もっと大きなキラキラ石がいいと思って、ちぇ ってため息をついた。

木箱からキラキラ石を出した。
こんな石ちっとも綺麗じゃないと思った。
こんな石、捨ててやる。
そう決意した。

「アシュレイ?」
振り返ると、ティアラがいた。
泣きながらキラキラ石を抱えてるぼくを見つめ、ティアラは言った。

「髪の毛切った?」

鈴虫の鳴き声がした。
ぼくはキラキラ石を抱えたまま吹き出した。

「10日前に坊主にしたんだよ。今まで気付いてなかったの?」
「うん」
頷いたティアラは、僕が抱えてるキラキラ石を見て笑顔になった。

「そのキラキラ石、本当にきれいだね。
みんなの秘密基地が華やかになるね」

その瞬間、やっと分かった。
恥ずかしいと思うのと反省とは違う。
僕は、分かち合える宝物を選ばなかった自分を恥ずかしいと思った。
だから恥ずかしいを思い出させるこのキラキラ石を捨てようと思った。
だけどティアラは今こう言った。

「そのキラキラ石。本当にきれいだね。
みんなの秘密基地が華やかになるね」

そうだ。そうだよ。
彼女はこのキラキラ石をみんなの宝物だと思ってる。
だけどぼくはこれを自分だけの宝物だと思ってた。
だから恥ずかしいを思い出させるこのキラキラ石を自分勝手に捨てようとした。
分けられない宝物を選んだ時と同じ過ちを僕はしていた。
このキラキラ石は僕だけのものじゃない。
お姉ちゃん、アーヴ、ティアラ。みんなのものだ。みんなの宝物だ。
宝物なんだよ。
キラキラ石を握りしめた。
今度こそ僕は、みんなと宝物を分かち合うことができる人間になろう。
恥ずかしいじゃなくて、反省をするんだ。
生えかけの歯を指でつつくティアラを見て、そう誓った。

宝箱

Treasure box
tagboatArtFair2024

Yuuki Kishi

作品本体価格Sellng Price(Artwork)
¥ 600,000
箱代/額装費Framing Price
¥ 35,000
消費税Tax
¥ 63,500
合計金額(税込)Total(include tax)
¥ 698,500
SalesStartDate:2026/04/24 22:00
             

More Details

drawing

drawing

証明書Certificate of Authenticity
タグボート発行証明書ありExist
サインSignature
あり Yes
EDITION
オリジナルunique piece
制作年Year of Creation
2026年
サイズSize
18.8x 15.9 cm
作品の状態Condition
良好good
額仕様Frame Specification
淡いグレー マットframed
額寸Frame Size
29.5x 32.6x 1.5cm
納品期間Shipping Time
約5週間5-6weeks
特記事項Notices
※既存額でのお渡しとなります。 ※tagboat Art Fair 2026出展作品となります。4月24日(金)16:00より、会場にて先行販売を行います。そのため、オンラインでの販売開始時には Sold Out となっている場合がございます。お届けは会期終了後、5週間程度を予定しております。
作品IDItem ID
78817

Profile

画家 岸 勇樹(きし ゆうき)
ロットリングイソグラフ0.1mmペンを用いての絵画・イラストレーション制作。
主な仕事に、絵画の展示・販売、企業からのオーダー絵画制作、オリジナルブランド製品の販売、百貨店とのコラボレーショングッズの販売や店頭ワークショップ・ライブペインティングの開催、ファッションアイテム・書籍・CM/PR映像・プロジェクションマッピングへの絵画やイラストレーションのデザイン提供、企業へのオフィシャルアンバサダー就任やアートディレクション担当など。

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