細腕で丹念にアクリル絵具を運び続けて描き出される煌めきの風景と、そこにたたずむ少女や天使像。それらは彼女自身のアバターであり対話者です。絵の各所へ配される灯火や光のアクセントが特徴的で、時にイルミネーションのようなスケール感で、また時には星の瞬きを思わせる微かな気配となって物語性を増幅します。
高い粘度をもって全体を覆うアンバー気味の彩色は、母胎のように深い心象風景の奥行きを思わせ、印象的に発光する光輪が、そこに生命を宿そうとする祈り、聖なるものへの憧憬の強さとして伝わり見るものの心を打つのです。
童画のようにピュアな感受性をたたえつつ、独特で細やかな技法をもって儚さと普遍性とを併せ持った世界観として描出できる異才によって、さかい氏は美大在学中より注目を集め、卒業と同時に地元仙台市を拠点としながら発表活動を始めました。一貫したコンセプト展開が見込める安定感や、成長見込みが期待を集めている新鋭です。
本作は、彼女の初期の代表作のひとつ。個展「神様のいないせかいで」(2024年、仙台市・中本誠司現代美術館)などで多数回展示されています。絵の中に描かれている花は、インパチェンス。花言葉は「個性」。作品について知人から「あなたらしくない」と否定されたことがきっかけで生まれたという作品です。
「私の絵の中の世界は、夢幻という言葉のように儚く不確かなものではあるけれど、それでもこれまで積み上げてきた世界が確かにそこに存在している。これが私なんだと開き直るような、自分を肯定するようなイメージで描いた作品」(作家ステイトメントより)。