太田剛気
Gouki OTA
タグボートが太田剛気の作品に初めて触れたのは、2018年夏の東京藝術大学の学祭である藝祭とその後の卒業終修了制作展だ。 ここで見た作品に我々は完全に度肝を抜かれた。
彼の描く作品のバックグラウンドにある「想像上の歴史」に圧倒されたのだ。 太田剛気の描く想像上の歴史は彼の壮大な世界観から成り立っている。 しかもそれを一冊の歴史の教科書にまで作り上げているのだ。
太田剛気の頭の中に史料が体系的に記録されており、相関関係に疑義がはさみ込まれないようすべて綿密に辻褄が合うように設計されている。 客観的にありもしない歴史を認識し、あたかも後世に伝えるように作っていく彼の世界観には舌を巻く。
彼の作品は「歴史オタク」による作り話と単純に片付けるような代物ではなく、壮大なスケールによる絵巻物であると理解すべきだ。 もちろん、彼の描くアクリル絵具の作品やプリント作品は、まるで「マンガ日本の歴史」に登場する人物のようで、またそれとは違う微妙な雰囲気で描かれている。 彼の描くどこにでもいそうでいない飄々とした人物の姿が、激動の歴史をドラマチックに生きる人物のようにも見えてくるから不思議だ。
はまってしまえば抜けられない、この独特の世界感に浸っていただきたい。 これまでのアーティストとは違う特殊な才能に魅せられ、その才能が開花して世の中に認められていく過程を楽しんで頂きたいと思う。
アート市場もこのような才能を求めているはずだ。