青木野枝が2004年に制作したカラーの油性木版画。エッチングやメゾチント、水性木版など、技法が変わるごとに新しい空間のとらえ方に取り組んできましたが、今回はその中でも最も平面性が強調され、色も単純化された作品です。「たまゆら」と読むこともありますが、「たまかぎる」と読み、万葉集にも訓まれた「玉が触れ合う時のように様にかすかに、、、」というニュアンスの美しさに青木が興味をもってタイトルとなりました。最近の彫刻にも多く見られる丸い玉が画面にあふれて、木版の面白さと、彫刻家、青木野枝の感性が一つになりました。一見2版に見えますが、3版を使用することで、画面の力強さと緊張感が強まっています。荒々しくもある彫りで、はっきりとした色面を見せつつ、眺めていると絵の中に足を踏み入れて、その色や光に包まれたくなるような空間を作りだしています。雁皮鳥の子という繊細な和紙に刷られています。
青木野枝は80年代から精力的に発表を続ける彫刻家で、多くの美術館、企業などに作品が収蔵されています。鉄を素材として選び、その作品の多くが、高さが2メートルを越す大型のものでありながら、彫刻とともに周囲の空間と光が自由に揺れ動くかのようで、重力を感じさせません。大きな鉄板から細い線を切り出すように溶断し、それらを溶接して作られた形には、柔らかさやあたたかさがあふれています。#script tag escaped#flgDispRecommend=false;#script tag escaped#