水面に映り込んだイメージは曖昧に揺らぎ、変容する。水面はあらゆるイメージを内包する可能性をもった器のようである。結果、その器が映し出すイメージは幻想的に溶け合い、現実ではないどこか別の世界に通じているように感じる。
この作品ではこちら側を意味する「此」、あちら側を意味する「彼」、水面がイメージを映し出すきっかけを与える「光」、これらの漢字から発音を抽出し、日本語読みで彼=hi、光=kou、此=shi、この三つの音でつながるあらゆる漢字を配置して水面を描くことで、水面を此方と彼方の狭間にある境界として捉えた。
ミニマルな限られた音から意味は広がっていく。作品のなかで漢字は縁によって出会い、互いの意味を交え、新たなインスピレーションを生む。無数の意味の結びつきによって水面のイメージそれ自体を曖昧にする。