ガラスはその性質から、物理的にある空間を外と内に隔てながらも、透明であることによって両者に連続性を与える一方で、反射によって写る自己とガラスの向こう側との距離を自覚させる装置といえる。
ガラスがもたらすこの近さと遠さの曖昧なニュアンスは、欲望を喚起する上で欠かせない要素であり、人の装いに直接働きかけるアパレルショップにおいてはとりわけ重要である。
デジタル化に伴う自己編集性の時代によって、実在の事物や空間より情報化されたそれが優位となる中でも、まとう行為への関心は変わらない。衣服をまとうことは個の表現であると同時にその外側の世界を身体にフィットさせることでもある。店舗の周囲の環境がファサードに映り込む様は、そうした衣服の内と外の関係を想起させる。そのことを念頭に置いたとき、ガラス面を被写体にして、反対に消費の対象そのものを被写体にすることを最低限にすることで、消費の空間に都市の多層構造の一端を垣間見ることはできないだろうか。とりわけ反射に焦点をあてることで、フレームの外側にあるはずの空間へと意識を向ける。
特徴的な多角構造の建物が、閑静な住宅街を映し出す。内部のマネキンとショップの周囲の光景とがシームレスに地続きとなっている。