黒い聖母は、太古地母神信仰の流れを汲む黒い女神であり、世界各地の聖堂や修道院に存在する。元はキリスト教以前から存在した原始宗教の1つである。
色の黒い理由は様々であるが一説には異教徒的な面も持ち合わせており、私はその謎に満ちた存在に心惹かれた。
人間の創りだした信仰対象の偶像の前に、人々が祈ることでその神聖な領域に自らも触れようとするように、私は描く事でその神性に触れようとする。
黒いマリアを描く事は私にとって、“浄化されながら描く感覚“が生じるという事でライフワークである。描くたびに少しずつ変化する細部の絵肌は、大作に向けた表現の発見の場でもある。
また、透明絵具の何層にも重なった表現と不透明絵具による即興性や勢いのある描き方や光と闇の鮮やかな色彩、絵具によるささやかに盛り上がった絵肌による重厚感が特徴的だ。