三塚新司
Shinji Mitsuzuka
1974年生まれ。
三塚新司は小さい頃ずっと絵を描いているような子どもだった。その才能は学校でも注目されるほどに⽚鱗をのぞかせていたが、周囲の反応とは逆に、天邪鬼だった三塚は絵描きの道を選ばなかった。高校卒業後は一旦は人と同じ道を進もうとするが、そうすればするほど世間と自分の間のズレを感じ取り、生きにくさをおぼえたという。次第に放浪する生活をするようになり、「やっぱり絵か、」と決意を固めることとなった。そして1999年、東京芸術大学先端芸術表現科に油絵科受験にて入学した。
それから、彼は吸い込まれるような深い蒼、あるいは空の透けてゆく透明感、そういった「青」を表現することに取り憑かれるようになる。その「青」を表現するに相応しい技法を探し求め、辿り着いたのがサーフボードの作り方だった。その技法に出会ったのは、大学を卒業して10年が経った頃だ。
三塚新司の作品は、流れるような「青」を重ねて描かれる。極彩色の光は透明な樹脂でコーティングされた表面を透き通り、海のような深みとなっている。漂うように波打ち、大きく渦を巻くそれは、個の存在を飲み込むようにして時間や場所のわからない世界へと誘うのだ。
彼はこの技法にさらなる表現の可能性を見出し、今も日々実験を繰り返している。これからますます進化していく作品に大いに期待したい。